亜急性の定義

柔道整復師(接骨院、整骨院の先生)は急性、亜急性の外傷を各種健康保険で施術できる国家資格となっています。「急性、亜急性、慢性」の中で、亜急性の定義について医師と柔道整復師で時折大論争になっています。そもそも亜急性とは病気に使われる医学用語であって、ケガに使われる言葉では無いという医師の意見が優勢です。もし外傷に使われる場合は、外傷後の時間経過の事を指し急性期、亜急性期、慢性期という表現になるとの見解です。外傷とは物理的な外部からの刺激を受けた際の生体の損傷をいい、負傷した日時がハッキリした急性しか無い!というわけです。ですからあえて急性外傷とは呼ばず、外傷もしくは新鮮外傷と呼ばれます。ところが柔道整復師が法律で唯一保険請求が認められているものは、急性および亜急性の外傷(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷の5種類のケガ)となっております。医師からすると「亜急性の外傷」というのは、おかしな日本語なのです。厚生労働省は、柔道整復師から毎月提出されるレセプトの保険審査において、上記の医師の見解を参考にして、亜急性の外傷の解釈については預かるという事になっておりますが、今後益々厳しく分析調査や場合によっては患者への聞き取り調査を推し進めるようです。

柔道整復師が主張する亜急性とは受傷からの時間経過の事では無く、反復動作や軽微な外力の持続的な積み重ねによる損傷(痛み)を指しており、少し論点がずれています。柔道整復師の養成学校で使われている柔道整復理論の教科書にも、そのように亜急性の定義が記載されているようです。柔整レセプト審査側の医師らの基準は新鮮外傷から7日が急性期、7日から14日以内が亜急性期という解釈です。それ以降は慢性期にあたり柔道整復師が法律で保険請求できる対象外だという事です。あくまでも原因の明々白々である一瞬の動作で一発で痛めたものが新鮮外傷であり、それ以外の保険請求を認めない!という姿勢を崩しません。本当にケガをしたのなら1週間も2週間も何故放置できるんだ!?という論調です。また本人が原因の心当りのない痛みは、新鮮外傷とは言えないだろう!と。心当りの無い痛みなのに、何故負傷年月日をレセプトに明記できるんだ!などなど医師からしてみたら、突っ込みどころ満載です。確かに、例えば右腕が折れていて覚えが無い記憶が無いなどありえませんから!亜急性の外傷という極めてファジー(あいまい)な日本語が消えるかも知れません。柔道整復師の養成学校の柔整理論の教科書から、亜急性外傷という定義を消せ!とまで言われています。おそらく殆どの接骨院(整骨院)が、今までこの亜急性と言う極めてあいまいな部分で保険請求をしてきたと思われますが、そもそも亜急性の外傷という表現が医学的に存在しません。柔道整復師オリジナルの解釈であり、柔道整復学の理論です。今のところ、柔道整復師の言う亜急性の解釈については厚生労働省が預かるとなっていて、今すぐ亜急性が保険請求取り扱いから外される事はありませんが、それがもし認められなくなると、今後どう生き残って行くんでしょうか?要注視です。

最後になりますが、この論争の根底には、整形外科医と接骨院(整骨院)の保険業務範囲がかぶることがあります。昔は整形外科も接骨院も今の様に多く有りませんでした。整形外科医からしたら柔道整復師が目の上のたん瘤なわけです。中には共存共栄で柔道整復師をうまく取り入れ経営している医師もいますが、極めて少数派です。誤解を恐れずに極論を言うと開業整形外科医の大半は、接骨院(整骨院)を嫌っており、見下していて、柔道整復師のレセプトの保険審査委員になっている整形外科医は、提出したレセプト(保険請求の用紙)に難癖をつけるわけです。山口自律神経研究所は、そもそも保険外診療ですので全く議論の外ですが、当院に来る前は、整形外科を健康保険で受診している方が大半です。整形外科で治らないから山口自律神経研究所に来るわけです。もし整形外科が保険が効かなかったら行く人は殆どいないと思います。そういった意味で患者からは正直なめられている(痛みの改善に関しては頼りにされていない!)と思います。以前、生活保護を受けている患者さんが整形外科に行ってもちっとも良くならないと、自費治療にも関わらず山口自律神経研究所に来られた方もいました。もちろん楽になった(#^.^#)と喜んで帰られました。そういうことが日常茶飯事です。ですから私からしてみれば、整形外科の先生方は、感謝の対象です。ありがとうございます。