糖尿病になると脳の海馬が萎縮 九州大チームが発表

糖尿病になると記憶にかかわる脳の海馬という部分の萎縮が進むことが、福岡県久山町の住民を対象とした九州大チームの研究で示された。海馬の萎縮は認知症患者の脳でもよく観察されており、チームは「糖尿病の人は、認知症を発症していなくても脳の異変が始まっている可能性がある」と指摘する。

久山町では九州大が長期的な疫学調査を実施しており、糖尿病の人はそうでない人に比べて認知症のリスクが2倍ほど高まるとの結果が出ている。今回は実際に脳がダメージを受けていることを示す内容で、米国で14日まであった米糖尿病学会で発表した。

町内に住む65歳以上の人を対象に頭部のMRIで脳の容積を測定し、糖尿病の有無との関係を調べた。1238人が参加し、うち286人が糖尿病だった。

脳の大きさには個人差があるため、「頭蓋骨(ずがいこつ)の内側の容積に占める脳の容積の割合」を指標に、脳の縮み具合を評価。年齢差などが影響しないように統計的に処理すると、糖尿病歴が長いほど脳の容積が小さくなる傾向だった。

中でも記憶と関係が深く、脳の奥の方にある海馬の容積をみると、糖尿病が10~16年だと糖尿病でない人に比べて約3%、17年以上だと約6%小さいという結果が出た。

糖尿病だと血管がもろくなり、神経障害や腎障害などが起きやすくなるが、脳もダメージを受けているとみられる。糖尿病の中でも食後に血糖値が上がりやすいタイプが、脳の縮みやすさに関わっているらしい。研究チームの秦淳・九大医学部研究院付属総合コホートセンター准教授(疫学)は「糖尿病は脳卒中などのリスクも高める。まずは糖尿病にかからないよう注意してほしい」と話す。

一方、運動をすると、糖尿病と認知症のリスクはいずれも下がるとされる。有酸素運動をした高齢者で海馬の容積が増したという米国の報告もある。